「体幹を鍛えたい」の真意


あなたは本当に「体幹を鍛えたい」んですか?
指導にあたっていると、スポーツ選手やスポーツ愛好家から、「体幹を鍛えたい」という依頼がよくきます。
本当に多くの、異口同音に言われるこのセリフですが、その真意は本当に体幹強化なのでしょうか?
ハッキリ言いますが、競技パフォーマンス向上の方法として取り敢えず思いつくのが「体幹強化」なだけですよね。
Jリーガーの事例
競技パフォーマンスの向上が目的であって、体幹強化は手段の一つに過ぎません。
目的に対して、体幹強化という手段が、本当にアプローチするべきポイントなのかは検討しなければなりません。
以前、Jリーガーを担当したことがありました。
かつてチームのエースストライカーで得点王に輝いたものの、怪我を機に30歳手前から得点を得られず、次第に出場試合数も減っていった選手です。
チームからもサポーターからも、旬が終わった選手として、レジェンドとして契約が残っているような状態でした。
彼も初め、同じように「体幹強化」を私に相談してきました。
なぜかと聞くと、「当たり負けてよくコケるようになったから」とのことでした。
取り敢えず状況を整理することにしました。
怪我で膝の半月板摘出もしていました。
YouTubeで得点王当時の動画も見ましたが、明らかに今と動きが違います。

これ、体幹がどうこうじゃないんでは……?
判断の結果、運動処方は非常にシンプルで、全身の筋力を回復させるというものでした。
というのも、そもそもプロスポーツチームでトレーニングしていたら、体幹が弱いなんてことはまずないんです。
日常的にメチャクチャ鍛えられていますから。
きっと怪我で休んでいる時も、できることとして体幹トレーニングはやっていたはずです。
それでコケやすいというのは、もっともっとシンプルに、足腰や他の筋肉が弱っていただけでした。
選手本人には、以前のプレーをするための神経系は残っています。
本人は常にかつての優れたプレーをしようとしています。
しかしそのプレーに要求される筋力が、以前と異なり足りていないだけだったのです。
何度かベーシックな筋力トレーニングとクイックリフトをして筋力と瞬発力を戻しただけで、競技パフォーマンスは元の状態に次第に近づいていきました。
20代前半まではバリバリのプレイヤーだったこともあり、筋力の回復そのものはとても簡単でした。
ずっと運動はしていたからでしょう、筋力が落ちているだけとは本人も思っていなかったようです。
目的と手段を違えるな
プロスポーツに限らず、こういったことはよくあります。
もちろん体幹は強い方がいいでしょう。
しかし体幹部はあくまでも接続部であって、そこの剛性がいかに高くても、足腰が地面に根付いていなければ宙に浮いた固いボール状態です。
大抵のスポーツは地面反力を利用して出力します。
体幹は確かに重要ですが、それ以外を甘くみないことです。
多くの場合、本人はそれに気づけないものです。
一度視座を上げて、目的に対する手段を適切に選択することが大切です。
というか困ったらさっさとS&Cの専門家にしっかり相談してください。