ボディビル、オリンピック種目化の可能性

IFBBにはボディビルをオリンピック競技に昇華させるという目標があります。
今なおそれを目指しているかは分かりませんが、この目標の下でアンチドーピングも推奨されてきましたし、JBBFもJOC傘下に入るなどの活動を続けてきました。
2024年パリ五輪を機に、ボディビルのオリンピック種目化について再考してみます。
2つの壁
ボディビルをスポーツと捉えてオリンピック種目化を目指す場合、ここには2つの壁が存在します。
「競技性の問題」と「ドーピング文化」です。
前者はともかく、後者の存在はこの件について壁どころか絶壁です。
競技性の問題
まず審査基準では審美性に主眼が置かれていますが、肉体美に絶対の正解はありません。
しかもトレンドと言われるその時期の傾向もあったりして、割と曖昧な判定基準です。
ボディビルや女子フィジークであれば筋肉の発達度合いや皮下脂肪の薄さなどで比較はしやすい方ですが、フィットネスカテゴリーなどはさらに審査基準が曖昧です。
こうなると、判定結果に対しての不満や意義が怒涛のように押し寄せるでしょう。
現在採用されている判定や審判が入る種目でさえ、あれだけ大炎上するのですから、どうなるか簡単に予想ができそうです。
オリンピックの審査種目には器械体操や高飛び込みなどもあります。
しかし同じように審査競技であっても、ボディビルには「技術」に当たる部分が乏しく、これがスポーツに該当するかも実際のところはかなり微妙です。
(もちろんポージングやステージングも「技術」ではありますが……)
さらに、勝敗がその瞬間には分からない点もあります。
順位発表でやっと全員の順位が分かるようになるのは、やはり「スポーツ」ではなく「コンテスト」なんだろうと思います。
ドーピング文化
この存在が絶望的だと思います。
いくらドーピング黙認のプロリーグと部門を分けたからと言っても、カテゴライズでは同じくくりです。
ドラッグフリーの団体であると謳っても、フェイクナチュラル(バレないドーピングユーザー)も存在します。
ボディビルの場合、大会当日のドーピング検査自体が意味を為さないこともあります。
ステイロイドを使用すると、その効果は10年以上も残ることが知られています。
例えば大会から逆算して、血液検査に引っかからない時期からステロイドをやめておけば、筋肥大の恩恵を受けながらも当日のドーピング検査を通過できてしまいます。
もっと根本的な話で言えば、ボディビルのメンストリームはむしろプロ側(ドラッグユーザー)です。
注目を集めて発展させてきたのも、皮肉にもプロ側なので、この点でもクリーンでフェアなスポーツとしての市民権を得るのは難しいのではないかと思われます。
プロレスとレスリングぐらい内容が乖離していれば、別物と見られる可能性はあったかもしれません。
オリンピック種目化の可能性
とは言え全くの無理かと言えば、そうとも言えないのかなとも思っています。
近年多くのアーバンスポーツがオリンピックに参入してきました。
2024年パリ五輪では、ブレイキンが初めて種目に採用されています。
臨場の人による判定種目という点では、ボディビルにも実現性はあるかもしれないと感じられました。
ただやはりドーピング問題の根が深すぎるとも思います。
いわゆるLife Time Natural (生涯で一度もドーピングをしていないこと)を証明する手段がなくては、オリンピックのような大きな国際舞台には上がれないでしょう。