ジョイントバイジョイント理論

“Joint by Joint Theory” (隣り合う関節理論)という考え方があります。
人体にある関節は、それらは「動作性関節」と「安定性関節」に区分でき、図のように隣り合って配置されているという考え方です。

動作性関節(Mobility):ダイナミックに動かすことができる
安定性関節(Stability):単一方向への動きか、動かさない方がいい
この考え方は、怪我の予防という観点で重要になります。
動作性関節の動きが上手にできていないと、安定性関節を代わりに使って(代償)動作しようとしてしまします。
本来あまり大きく動かない関節に無理がかかりますので、結果ストレスが大きすぎて怪我をすることになります。
代表的なのは腰です。
腰は安定性関節なのですが、股関節や胸郭の動きの代わりをしてしまいがちです。
「かがむ」という動作は本来は股関節の仕事ですし、「体を捻る」のは腰ではなく胸郭の役割です。
いずれも「腰でする動作」という思い込みがあり、多くの人がこれで腰痛を引き起こしています。


「体を捻る」など本来は腰椎に非常に負荷のかかる行為です。
また胸郭の動きが悪いばかりに、今度は肩に負担をかけることもあります。
人が痛めやすい部位は、肘・膝・腰と多くが安定性関節だったりします。
例外的には肩がありますが、これは可動域の広さと引き換えに安定性を失ってしまった機能的な問題です。
体の正しい使い方、というのはこういった怪我を発生させないような関節動作をちゃんとできている状態のことです。
理にかなっているトレーニングギア
ウェイトトレーニングで使用されるトレーニングギアは、この理論に即してあります。
関節と対応するギア
- 肘:エルボースリーブ/エルボーラップ
- 膝:ニースリーブ/ニーラップ
- 腰:トレーニングベルト/コルセット
- 手首:リストラップ

肘・膝・腰は安定性関節なので、ここを守るようにギアが配置されています。
例外的に、動作性関節である手首にもギアが配置されています。
ウェイトトレーニングにおいて手首はほぼ動作性を要求されることはなく、むしろプッシュ動作では安定性が求められるためです。
リストラップは手首の反りを抑えるというよりは、あくまで橈尺関節が開くことを防ぐための道具です。
スポーツ・トレーニング・日常生活のいずれでも、怪我をしないよう関節それぞれの役割を意識して、「不完全な力学」が発生しないようにしよう。