ストレッチで筋肉が硬くなる!?……のか??


非常にキャッチーな論文が出ていました。
筋肉をグッと伸ばす静的ストレッチングを長期間行うと、なんと筋肉は硬くなると報告されています。1
この研究ではストレッチングストラップを用いて、ハムストリングを伸ばすストレッチングを30秒×3セット、週5日間、4週間継続しました。
結果、ハムストリングスの大腿二頭筋長頭と半腱様筋が硬くなったと報告されています。
小さい頃からストレッチは筋肉を柔らかくするために重要だと教えられてきたかと思います。
しかし静的ストレッチングは、必ずしも筋肉を柔らかくするわけではないということを、この研究は示唆しています。
ただ、これを結論とするのは早いと思います。
この研究は、いくつかの方法論的問題を含んでいました。
ここに科学の怖さがあります。
その研究を疑え
この研究ですが、対象者は自宅でストレッチングを行なっていました。
ストレッチの最中の筋肉の活動や、ストレッチングの姿勢、ストレッチングの強度などを、しっかりと監視しているわけではありませんでした。
そのため、そもそも静的ストレッチングが正しく行われていたかどうか、という点に疑問が残ります。

個人的な感覚ですが、この結論が導き出されるとは到底思えません。
“科学的根拠”と聞くと、「すごいな」「説得力があるな」と思うのですが、実際には方法が滅茶苦茶な研究もありますし、研究者自身の主観やバイアスが含まれた研究もたくさんあるので、一つ一つの研究内容をしっかりと吟味することが重要となってきます。
とはいえ論文を読むという作業は、非常に面倒で果てしない作業です。
ですので、現役研究者という立場から、論文の内容をしっかりと精査して皆さまにお届けできればと思います。
- Russell A, Choi B, Robinson D, Penailillo L, Earp JE. Acute and Chronic Effects of Static Stretching on Intramuscular Hamstring Stiffness. Scand J Med Sci Sports. 2024 Jun;34(6):e14670. doi: 10.1111/sms.14670. PMID: 38856021. ↩︎