低重量でも筋肥大するには?

以前より、トレーニング効果を上げるには総負荷量が大切だという話をしてきました。
それについて、こんな質問をいただいております。

なぜ1日に何万歩も走っている長距離ランナーの脚の筋肉は、ボディビルダーのように大きくならないのですか?
確かに、総負荷量の計算で考えると、ボディビルダーを上回るとんでもない回数と頻度の負荷が脚にかかっているはずです。
これについて答える総説論文が発表されています。1
低い重量で筋肥大を狙う場合には、重量 × 疲労困憊までの回数 × 3~4セット × 週2~3回 で行うと良いとされています。
ただしこの重量については、最大挙上重量の30%以上である必要があります。
長距離選手の場合は一歩一歩の負荷が小さすぎるので、たくさん走ったとしても筋肥大の程度は小さいのではないかと考えられます。
高齢者や怪我をしている方、重い重量を扱うのが苦手な方が、低い重量で筋力や筋肉を大きくしたい場合は、最大挙上重量の30%以上で疲労困憊までやることを意識してみましょう!

とてもクリティカルな良い質問でした。
今回紹介した論文は、要因の一つでしかありません。
これ以外にも運動様式やエネルギー供給系、生化学的反応など様々な要素が絡み合って、結果として長距離ランナーの脚の筋肉はあのサイズに仕上がっていきます。
もしどの程度の負荷でも筋肥大を起こすのであれば、重力に抗って立っているだけでも筋肉は作用しているので、人類はもっと筋肉質なはずです。
筋肥大の重量調整にもスイートスポットが存在します。
最大挙上重量の30~80%の間で設定すると、効率的な筋肥大を狙えるでしょう。
- Weakley J, Schoenfeld BJ, Ljungberg J, Halson SL, Phillips SM. Physiological Responses and Adaptations to Lower Load Resistance Training: Implications for Health and Performance. Sports Med Open. 2023 May 12;9(1):28. doi: 10.1186/s40798-023-00578-4. PMID: 37171517; PMCID: PMC10182225. ↩︎